現場一期一会(55年前、今、未来へ 万博会場で思う)

55年前、今、未来へ 万博会場で思う

1970年の大阪万博で思い出すのは、月の石と「こんにちは」を繰り返す三波春夫さんの歌声です。

小学2年生でした。福岡市の大規模団地に住み、ローラースケートに熱中していました。高度経済成長期のまっさかりです。

子どもも口ずさんだ万博のテーマ曲「世界の国からこんにちは」の歌詞は、毎日新聞社の公募で選ばれました。300万枚以上のレコードが売れたそうです。

あれから55年――。大型連休明けに大阪・関西万博を訪れてみました。

開幕時の混乱も落ち着いたのか、会場へのアクセスは順調でした。一部パビリオンは「2時間待ち」でしたが、人気の大型テーマパークに比べればまだ余裕です。大屋根リングの一角にある芝生広場では、弁当を広げる家族連れも多く見られました。

世界へ日本の情報を発信する公益財団法人は、前回を「成長期」、今回を「成熟期」と定め、万博開催の意義を問いかけます。

日本に集まった海外の珍しい展示に歓声を上げたのが前回でした。今はインターネットで海外からの情報にあふれ、周囲に外国人がいるのも日常です。

半世紀余り前に未来の電話機として展示された「ワイヤレステレホン」は、現在ではスマートフォンとなって生活必需品です。一般家庭には珍しかった車は、デモ飛行とはいえ、空を飛ぶまでに進化しました。

今回の万博はどう評価されるのか。もしも次があるなら、どんな時代を映すのでしょうか。会場を後にしながら、未来の暮らしを想像してみました。

朝日新聞立川支局員 山浦 正敬