デジタル時代に健在の紙の高校新聞
「デジタル時代になぜ紙なのか」。紙の学校新聞を発行する高校が今も各地で健在と聞き、高校生記者に理由を聞いてみたいと思っていました。その機会が最近、実現しました。
都立立川高校の生徒9人が昨年12月、立川支局に来てくれました。生徒会活動の一つ「新聞委員会」として、月刊新聞を出す1、2年生です。発行は通算970回を超える歴史を誇ります。同僚記者が同高を取材した縁です。
貴重な機会だからと、若手、中堅の記者と共に即席の記者会見に臨みました。なぜ記者になったの? 紙の新聞の意義は? ネタの探し方は? 高校生記者からの質問が続きます。
私たち記者は取材する側で、取材を受ける機会はまずありません。答えをまとめる思考過程が、自らの仕事の意義などを再確認する機会になりました。
その会見に基づく記事は今年1月号に掲載されました。見開き2㌻の署名記事は「昔から続くものには残る理由があるのだと感じた」と紙の新聞をとらえました。末尾では、読者である高校の生徒に「読んでみてはどうだろうか」と呼びかけてくれました。
同号はほか、「論説」で気候変動と世界の分断を考え、「1面連載」で高校のトイレ問題を指摘するなど硬軟織り交ぜた力作です。
「高校生がなぜ、紙の新聞か」への答えは引き出せませんでしたが、後日に寄せられた決意を込めた感想に勇気づけられました。
「日々の話題に敏感に、健全な批判精神を忘れずに、記事を書いていくことで存在意義を果たしたい」
朝日新聞立川支局員 山浦 正敬